イノベーションを呼び起こす
コミュニティ形成をサポートするしごと

1990年代にインターネットの商用利用がアメリカで始まったことを契機とした、いわゆる「情報革命」が起こったことを知っている方も少なくないはずです。そのムーブメントが日本国内にも伝播し、90年代中期にはベンチャー企業、今で言うスタートアップが次々と登場し、活躍のフィールドを広げてきました。2020年代の国内ウェブ業界における代表的な企業のうち、この頃に設立された企業は数え切れません。

セミナーやイベントから、新たなコミュニティやビジネスが数多く誕生

その中心地だったのが、東京の渋谷です。当時、「ビットバレー」と呼ばれたこのエリアには、小さなマンションの一室などにオフィスを構えたベンチャー企業が数多くありました。そのオフィスは社員だけでなく学生やフリーターなどさまざまな人種が集うカオスの様相を呈していたとか。新しい文明の利器であるインターネットの可能性を信じ、その特性を用いてどのようにビジネスを作り上げていくのか。さまざまな立場の人たちが昼夜を問わず議論を交わし、実行に移されていったと聞きます。

2010年代に入ると、今度はスマートフォンの普及を契機に同様の動きが見られました。日夜、さまざまな会場でビジネスコンテストや懇親会が開催され、仲間と出資を集い、ビジネスを立ち上げていく。いわゆるスタートアップコミュニティが当時黎明期であったコワーキングスペースという新業態の場所と結びつくことで、アイデアが昇華してビジネスが生まれていきました。困難な目標を敢えて掲げ、その達成のための戦略をさまざまな支援者たちとブラッシュアップして、仲間と乗り越えていく。そのような立ち上げの時期を経て、今では上場している企業も少なくありません。

地方で生まれる新たなビジネスのカタチ

2020年代、インターネット業界は成熟し、歩調を合わせるようにテクノロジーも高度化。気づけばスタートアップや過去に実績のない一事業者が新規参入してビジネスをドライブさせていくことが難しい状況になりつつあります。すでにさまざまな事業者がビジネスを立ち上げてきたこともあり、いわゆるニッチも含めて参入障壁が低い分野でもプレイヤーが揃いつつあるためです。事業化が見込める新たなパイは時間の経過とともに限られてきています。潤沢な資本力を有する大企業、あるいは高い専門性や技術力を持つ個人・組織などにプレイヤーが限定されていく未来が確実視されているのです。

その裏で、新たなビジネスを立ち上げるムーブメントも起こっています。「グリーン革命」と呼ばれるような環境に優しいビジネスの再構築や、社会や地方が抱える課題解決、そして地域資源とデジタルを結びつけた新たなサービスや製品の開発などです。昨今のSDGsへの注目度の高さなどもあり、この分野での活躍を目論むプレイヤーたちがこぞって地方に軸足を移しています。地方で芽吹きつつある、これらの動きはまだまだとても小さいものです。全国区で報道されることも少ないため、首都圏からその様子を窺い知ることもできないかもしれません。しかし、福島県内に限定しても、さまざまなチャレンジが日々生まれており、今後の可能性に期待が集まっています。

プレイヤーどうしのつながりこそが可能性

そして、こうした新しい分野で挑戦するという動きは今まさに、ここ白河市でも起こりつつあります。子どもの貧困問題に真正面から取り組んでいる人。街なかのにぎわいを取り戻すべく若年層を活用する取り組みを進める人。地域の伝統産業に新しい風を吹かせるべく、地域外の著名企業やブランド、デザイナーなどとコラボする人。産業廃棄物として捨てられていたものを新たな食品に作り替えるノウハウを確立した人。廃業で継承が危惧されていた技術を再興し、新たな分野に展開する人……。その数は、挙げ始めたらキリがないほど。

それぞれのプレイヤーが自らのスキルや経験を元に、それぞれのビジネスを一歩一歩育んでいます。地縁の有無、年齢、性別、経験などは関係ありません。プレイヤーとして活動する人たちに共通しているのは、ビジネスを立ち上げるための熱量と意志、そして実行力を備えていること、ただそれだけ。白河では今後もきっと、新たなプレイヤーが続々と登場してくるに違いありません。

例年2月に行われている「だるま市」も新たな姿を模索しています

そこで求められてくるのが、そのような人たちの集う場所です。すでに活躍しているプレイヤーをはじめ、移住者や地域おこし協力隊、さらには地域の人たちが交わり、時に外部の人を交えながら自らのビジネスについて壁打ちする。あるいは、集った人たち同士で相互のスキルを補完、知人を紹介し合うといったことも想定できるかもしれません。他にも、コラボレーションが生まれ、新たなビジネスを創出する、といったことも。何かを仕掛けたいと考える人たちが集うことで、生まれる可能性は計り知れません。そう、新しいビジネスの立ち上げには、常にそのような場、コミュニティの存在が欠かせません。

今回、白河市が地域おこし協力隊として募集する「コミュニティ形成 支援」というしごとはまさに、そのようなプレイヤーたちが集う場、コミュニティの形成を担います。いわゆる「コミュニティマネージャー」と呼ばれるしごとと共通する部分もありますが、そのコミュニティ自体の形成やリアルな場作り、プレイヤーたちがつながる仕掛け、イベントなどの展開、SNSコミュニティとの連動といったところまでに業務範囲はおよびます。

ワクワクさせる取り組みが生まれるコミュニティを

また、地域外からプレイヤーを募り、既存のビジネスとマッシュアップさせるといった取り組みも考えられます。小さな事業者の力を借り、スモールスタートでプロダクトをリリースしてブラッシュアップさせていくようなこともすでに各地で起こっています。こうした様相はさながら、インターネット黎明期にさまざまなサービスがリリースされていたころを彷彿とさせます。そして、これらの取り組みは小さなコミュニティでの前向きな雑談から始まっていることも少なくありません。

白河には多くの「仕掛け」るための場が残されています

何かを仕掛けたい人たちが集い、飲み物を片手に、他愛のない話に花を咲かせる。そして、時に前向きな雑談が飛び交う。そのようなコミュニティ、場所からはきっと世間の人びとを楽しく、ワクワクさせてくれる何かが生まれてくるはずです。

ウィズコロナ・アフターコロナと言われる時代を迎え、コミュニティの在り方にも新たなスタイルが求められています。時代の変化の機微を捉え、柔軟に変化しながらコミュニティの新しいスタイルを確立させていく。もちろん、その実現は簡単なものではありません。当然ながら失敗も少なからず生じるはずです。自治体でのしごとであるため、さまざまな制約という壁に突き当たることもあるでしょう。そのような時には市役所の担当者や現役、OBの地域おこし協力隊が強力にフォローアップします。

このしごとの応募者に求めることは4つ。

・自身が手掛けるコミュニティ、場所が何かを生み出すと信じられること
・多少の失敗、挫折などに遭遇してもくじけない心を持っていること
・考えに軸を持ちながらも柔軟に他者の考えを取り入れられること
・そして、白河に興味を持ち、地域に貢献したいという熱意があること

「人と人がつながることで生み出される可能性は限りしれない。」

その可能性を信じて、コミュニティ形成に取り組んでいただける方に来てほしいと思っています。

 

白河市地域おこし協力隊「コミュニティ形成 支援」担当の募集詳細

業務概要 地域内外を問わずプレイヤー、およびプレイヤー候補者の方々を結びつけることで、新たなビジネスの創出、既存ビジネスの磨き上げといった具体的なアクションが生まれることを狙います。また、そのための仕掛け、仕組みづくりをさまざまな関係者と調整して実行することを期待します。具体的には以下のような業務を想定しています。

・移住者や地域おこし協力隊、地域の方が参加するコミュニティの立ち上げ
・地域内のプレイヤー同士のコラボレーション促進
・地域内外でのビジネスマッチングの仕組み構築
・コミュニティづくりのためのイベント、セミナーの実施
募集対象 事業会社などでのコミュニティビジネス経験者(リアル、ウェブ問わず)、ビジネスマッチング業務経験者、イベント企画・運営業務経験者、人材紹介業などでのコーディネート業務、ベンチャーキャピタル等での融資先選定業務経験者、そのほか「人をつなぐ」ことを得意とする方
募集人数 1名(充当次第、募集は締め切ります)
選考方法 1次選考(書類審査) → 2次選考(市内訪問及び意見交換)→3次選考(面接審査)
詳細は市役所のウェブサイトをご覧ください。
応募はこちらから

この記事の執筆者

久野 宏(Hiroshi Quno)

白河市地域おこし協力隊 / コミュニティスペース「温室」プロデューサー

ウェブ業界でのセールス、マーケ、ディレクター経験を経て2017年からフリーランスとして独立。国内外のBtoB企業などへウェブを活用したプロモーションの支援を行う。プライベートでは、クラブ音楽業界でのイベントを多数主催。自身もDJとして都内クラブやDJバー、野外イベントなどでプレイする。
2020年春に福島県白河市へ移住し、地域おこし協力隊との複業に挑戦。コミュニティスペース「温室」にて、地域の内外を「つなぐ」仕掛けを模索中。

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